<ノエルNo.13高血圧について 第2弾>の続き
今回のガイドラインの変更点
高血圧の診断は140/90mmHg以上とすることは全世界で共通しています。血圧が140/90mmHgを超えると明らかに脳卒中や心血管病のリスクが高くなることが色々な研究で解っています。また至適な血圧は120/80mmHg未満とされ、120-139/80-89mmHgの血圧でも血圧が高いほど心血管病が増えることや将来高血圧に移行する確率が高いことから、この範囲の血圧の方も高血圧への進展を防ぐため生活習慣の修正をお勧めします。家庭血圧では高血圧の基準は診察室での基準より5mmHg低く、135/85mmHg以上です。
前回のガイドラインでは降圧目標が130/85mmHgとより厳格になっていましたが①今回の改定では目標値が少し変わり140/90mmHg未満となりました。今回目標値が上がった理由は、さらに降圧することにより心血管病のリスクがより低下することは期待できますが、それを支持するデータがないため高血圧治療開始血圧と治療目標血圧とのギャップをなくし、目標が140/90mmHg未満となりました。ですので、以前の厳しい目標に達している方はわざわざ降圧剤を緩める必要はありません。
②後期高齢の方の目標はJSH2009では140/90mmHgとなっていましたが、JSH2014では150/90mmHgが目標となりました。
高齢者では動脈硬化が強く血圧が低いと重要臓器の血流障害をもたらす危険があるためです。しかし症状の変化に注意して最終的には140/90mmHg未満を目標とします。
③心血管リスクの高い糖尿病や蛋白尿陽性の腎臓病では今までどおり130/80mmHgを目標とします。
家庭血圧の目標は基準と同じく外来診察血圧より5mmHgずつ低い値とします。
治療はまず生活習慣の修正が重要で『ノエルNo.6』でご説明した内容と変更はありません。降圧剤の選択については一部変更がありましたが、ガイドラインに基づき患者さまごとにご説明致します。10月にはJSH2014のダイジェスト版や患者様向けガイドラインが発行される予定です。
治療の考え方にも変化あり
医師が患者様に服薬を指示しキッチリ飲んで頂くことをコンプライアンス(受諾)といい、従来はコンプライアンスをよくすることが良い治療のあり方と考えられていました。しかし、これは単に規則や命令を守るという意味であるため、最近はアドヒアランス(支持)、コンコーダンス(一致)という考え方が導入されました。アドヒアランスは患者様が病気や治療の必要性について理解して頂き自発的に治療を続けるという望ましい姿勢であり、コンコーダンスは患者様が医師と充分話し合い合意のもとで治療方針を決定することです。当院ではこのようなアドヒアランス、コンコーダンス医療をめざしています。
日本の高血圧が原因となる死亡者数は年間10万人と推定されます。『健康日本21(第2次)』では食生活・身体活動・飲酒などの対策推進により国民の収縮期血圧(上の血圧)平均値を10年間で10mmHg低下させることを目標にしています。それにより脳卒中死亡数が年間約1万人、冠動脈疾患死亡数が年間約5千人減少すると推計されています。血圧についてご心配な方は是非ご相談下さい。
(院長 橋爪喜代子)